一級建築士事務所

なかおデザイン室

ARCHITECT + ENGINEER OFFICE

引き渡し

上ヶ作緑地の家のお引き渡し。

工事はぎりぎりまでかかり一部残工事はあるものの、なんとか施工チームが引き渡せる状況までもっていってくれました。

入居は夜になるので、そのタイミングまで調整や清掃を工務店と一緒に行う。

造り付け家具を拭きながら、静かな室内を見ていると、数日前までの慌ただしさや雑然さがウソのような気持ちになると同時に、良い建築になったなとしみじみ思う。

その後、クライアントご家族と無事に再会。ひとしきり室内を確認いただき、入居を見届けることができました。

  

土地の契約からちょうど1年。

クライアントご夫婦には、TVの放送をご覧いただいたり、自宅にも何度も足を運び見学していただきました。日々の暮らしで大切にしている事柄に、ぼくたちも共感するところが多く、何より設計者としてぼくたちを信頼してもらえたことがスムーズに着地できた大きな要因だと感じています。

この建築の趣旨をよく理解し対応してくれた工藤工務店の工藤専務、面倒な納まりをいつも楽しく前向きに取り組んでくれる建具屋さんのアロウズさん。「この寸法だと冷蔵庫の搬入あぶないんじゃない?」と構造家なのに教えてくれる向後さん、施工にとどまらず外構のデザインも一緒に考えてくれた季織苑の時松社長。いつもぼくが納得いくまで付き合ってくれる家具の三陽木工さん。

工期、コスト、クライアント、設計、施工。いろんな条件が噛み合わなければ、良い建築は生まれない中、約束の日に無事完成を迎えられたことに、クライアントのご協力をはじめ、関わっていただいた全ての方々に感謝です。

   

   

   

今回の計画の概要。

建ち方と規模のこと:

駐車場と兼用したアプローチの前庭を設けるために、既存の雛壇擁壁と土を撤去することと、コスト的にも側面の擁壁はつくらずに自然法面で段差を吸収することで、公園へと連続した景観と、道ゆく人からは左右両側に開けた緑地が見える構成です。並びの住宅のほとんどは、擁壁で1段あげて建物を面積一杯建てる配置ですが、クライアントによって吟味された「必要な分だけ建てる」ことができたおかげで、この敷地のサイズ感だからこそ、その余白を庭や法面として活用することができました。

構成:

深い軒のある平屋にコンパクトな2階が載る構成。小さな空間をつなぎながら、生活の動線の端部に前庭や公園、中庭に向けて視線が抜けていくように開口部を配置することで、日々のくらしに変化と豊かさを与えてくれるように配慮しています。

昭和50年代に開発された約60坪の敷地割。一度目の役割を終え、ちょうど住み手の入れ替わりはじめたこの場所に、新しい住まい在り方を提示できた気がしています。