一級建築士事務所

なかおデザイン室

ARCHITECT + ENGINEER OFFICE

先生の先生

都内で進んでいる店舗の現場打ち合わせ。工事費の減額の話と施工レベルが芳しくないことが合わさった内容で、気分が消耗する。

こりゃいかんと、帰りに乃木坂の篠原一男「空間に永遠を刻む」の展覧会へ。

篠原さんは、ぼくたちが学生時代所属した研究室の先生、岡河貢さんの先生にあたる人。

近代日本を牽引する建築家のほとんどは、欧米のモダニズム建築が下敷きとなっていることに対して、

篠原さんは日本の伝統建築の抽象化の問題から始めるという独自の設計手法を展開した稀有な建築家でした。

あらためて、展覧会を通してみながら、篠原さんの言説(アフォリズム)、空間(フォルム)、図面(対外的表現)。これら3つが一体となって当時多くの若い設計者たちを魅了したであろうことを実感する。

ずっと気になっている詩人・谷川俊太郎さんの住宅の模型を初めてみる。

傾斜した自然そのままの地面に、45度の方杖柱をもつ直角屋根を幾何学の記号としてぶつけて、新たな意味を見つけ出そうとする。研ぎ澄まされた形態と言葉は、今も刺激的です。

篠原さんは著書「住宅論」の中で、「自由」という言葉を頻繁に使っています。

社会状況、敷地環境、施主の振る舞いによって、建築設計の本質を揺るがせない。

建築家がどこまでもその思考を深め、広げていくその「自由」を奪わせないとする純粋な宣言は、今もなお心に響きます。