一級建築士事務所

なかおデザイン室

ARCHITECT + ENGINEER OFFICE

原さん

都内の現場打ち合わせのあと、建築家・原広司さんの元事務所である「アトリエファイ」で開催されているインスタレーションを見にいく。

原さんは京都駅ビルや梅田スカイビルで知られる建築家。

元事務所には、アーティストである原さんのご子息である夫妻の絵画や作品が展示されているのと、原さんの愛読書も閲覧することができます。

伽藍堂になったアトリエと作品群はうまくシンクロしてギャラリーのようで、室内に巡らされたワイヤーの上を白い球体が移動する作品は、まるで小さな妖精か生き物たちが、主人を失った空間を彷徨っているようにも感じられました。

内藤廣さんとの対談「著者解題」の中で原さんは自身の建築のあり方をこう話しています。

「伊那谷は南アルプス、中央アルプスの壁に挟まれて上部にガラス屋根がかけられている。そうしたインテリアの建築モデルですね。やっぱり、ファサードというか建築が表だと思うのは集落です。」

自身の出身である長野の渓谷が建築のインテリアと連動していて、立ち現れるファサードは集落の様相を呈している。京都駅ビルやヤマトインターナショナルにおける、内部の深い吹き抜け、外部の分割されたファサードをみるとその一端が垣間見れます。

アトリエファイのエントランスには、梅田スカイビルのイメージスケッチが飾られていました。

空に浮かぶ雲のようなリングとそれを支える透明な見えない柱。

難解なテキストとはまた違った美しいそのスケッチからは、立ち現れるそのボリュームを自然の中に還元する、もしくは一体化するという普遍的な方法のように見えました。

大学院のころに参加したあるコンペティションで、審査委員長をしていた原さんに一等に選出いただいたことがありました。

その頃の自分は、設計をこれからやっていくのか、いけるのかもよくわからないまま、ひたすらコンペとバイトの日々でした。バイト先のガソリンスタンドで夜勤をしながら、廃棄された過去の中国新聞を読み漁り、地方都市の課題や環境問題など、建築がもっと社会の問題に介在できないのか、悶々としながら考えていました。

そんな中提案の1つが、原さんたち著名な建築家たちから評価いただいたのは自信につながり、「もうちょっとやってもいい」と言われている気がして、ついうっかりと、そのまま建築の迷宮に迷い込んでしまったのでした。